無駄なことを省こうとしたら、わたしがいなくなってしまった話。
「無駄を省かなきゃ」
取り憑かれたようにずっと、そのことばかり考えていた。
行動も、考えも、感情も。
無駄がいっぱあるからうまくいかない。
とにかく無駄さえ省けば、きっとうまくいくんだ。
そう、思っていた。
断捨離、断捨離、断捨離。
そう思って、なんでも捨てて、なにも取り入れず、ただただ無駄なものと決別しようとした。
でも、あるとき、ふと、気がついた。
無駄を省きすぎたら、
わたしが、いなくなってしまったことに。
考えてみたらそうだ。
無駄なことばっかり考えて、
無駄なことばっかりやっちゃって、
それでも、
あははって笑って、
またやっちゃったね、アホだね、って笑ってたのがわたしなのに。
いつのまにか、
無駄を削るために、
ゴリゴリ、と、
わたし自身まで、削ってしまっていた。
無駄がない方がいいならば、
そもそも、わたしである必要は、ない。
もっと早く、もっとうまく。
効率的に美しく。
なんだって器用な人は、世の中たくさんいる。
でも、無駄なことに、無駄な時間をたっぷり使って。
人が無駄だと思うことも面白がって。
無駄なことしちゃったって、落ち込む人と笑い合って。
そうやって生きているのが、わたしなはずなのに。
だから。
無駄を省く、って考えるのをやめてみた。
自分を削ることを、
わたしを押し殺してしまうことを、
やめてみた。
だって。
むぎゅーーーーって潰されて押し殺されてしまうならば。
もっと広い空間に出たらいい。
満員電車に無理に飛び込んでいかなくたって、
第一村人が見つからないような田舎だってたくさんある。
無理に行列のタクシーに並ばなくたって、
歩いて帰れる範囲で、
面白いお店も、ステキな職場も、
なんだって、どこにだって、あるんだ。
もしもそれでもどうしても。
例えば潰されたって住みたい街があるのなら。
苦しくたって電車の速さをとった方がいいのなら。
自分が納得できる理由があるのなら。
その環境の中で、自分だけの楽しみを見つけたらいい。
潰されて苦しくて、眉間にしわ寄せてたら、肩も凝って頭も痛くなって、もう嫌になっちゃうけど。
それでも、例えば、潰してくるお姉さんの、お母さんのお父さんのお兄さんが、めっちゃお人好しで、うちのおじいちゃんがお世話になってたとか妄想してみたり。
ふと見上げた先の広告を、心の中でハイテンションで読んでみたりとか。
「次はぁ、しながわぁ、しながわでーす」という車掌さんのモノマネを隣の人に聞こえるかどうかの声で、ドキドキしながらしてみたりとか。
なんだかそんな、ちょっと無駄でくだらないことができたらきっと。
そんなことで笑える余裕があったらきっと。
どんな環境でも、息をして生きていける。
No Joke, No happy.
フィリピンの先住民族のアエタひとたちは、いつもそう言って、真剣にくだらないことをして、たくさん笑わせてくれた。
無駄なことのせいで、できないこともあるかもしれない。
無駄なことばっかりしてたら、気付いたら、みんな先に行ってしまってるかもしれない。
だけど。
何かを得るために、
何かを犠牲にして、無駄をぜーんぶ省いてしまったら。
その時は。
わたしが、いなくなってしまう。
本当の邪魔な無駄を省くなら、きっと、心が軽くなる。
だけど、無駄を省こうとして、心が苦しくなっていってしまうなら。
きっとその時は、何かが、違うのかもしれない。
その時は無駄に思えても。
ワクワクしながら回り道しながら
駆け回った方が、結果的にはスピードが、上がるかもしれない。
例えばその瞬間はなんの役にも立たなかったとしても、ある時ピンチが訪れた時に、急にそのことが頭に浮かんで、助けてくれるかもしれない。
無駄だと思えることに、救われることは、たくさんある。
そう。
無駄があるということは、
心に遊びがある、ということだ。
無駄がある、ということは、
人生に余裕があるということだ。
隙間を全て削って埋めてしまったら。
人生はきっと、息苦しいものになってしまう。
結果として、省くことで楽になる人と、
遊びを保つことで、エネルギーを生み出す人と、
きっといろんな人がいるはずだ。
だから。
無理をしなくていい。
嘘をつかなくていい。
それが一番きっと、しっくりときて、無駄のない生き方になると思うから。
誰かの生き方を真似して苦しむのではなく、
自分の生き方を、全うすることが、
何より心地よく、何かを生み出すことができるはずだから。
そう思ったら、ちょっとだけ、こころがまるくなった。
ちょっとだけ、余裕が生まれてきた。
そうなると、なんだかよく眠れるし、ごはんも美味しい。
参った。
食欲の秋。
体まで、まるくなりそうだ。
まぁ、それならそれで。
おかめさんのように、周りに福を呼べるようになればいいか。
腹踊りでもしてみんなが笑ってくれるなら、それでいいか。
や、そこまでは、ちょっと(笑)