わたしはいつだって、出会ったことのないその人に、恋い焦がれ続けるのです。
昨日はあったかかったなぁ、って思うと今日は寒かったり。
風がビュービューガタガタ吹いてきたり。
この季節。
嫌いじゃないです。
ちょっぴりいつもより眠くなるけれど。
なんだか体も重くなるけれど。
でもやっぱり、嫌いじゃないです。
いえ。
それどころか。
好きです。大好きなんです、この季節。
ガチガチに固まっていた体も、
気温がゆるりと上がると、ふわんとほぐれて。
街はなんだか色づいて浮き足立って。
あったかくなるって、ただそれだけで、なんだかいいですよね。
そんな中。
毎年この季節がやってくると、わたしはその人のことを想います。
一度も会ったことがない、その人のことを。
きっと、これから先、生きていても、決して会うことはないのでしょう。
それでも、いいのです。
これから先、どんなに片思いだとしても、わたしはその人をお慕い続けるのです。
いつかもし生まれ変われることができたなら。
もしも、たった一目でもその方にお会いすることができるのならば。
一度でいいから聞いてみたい。
「どうして、大福に苺を挟もうと思ったのですか?」
そう。
世界に衝撃を与えるほどの大革命を起こしたその人に、わたしは聞いて見たいのです。
世界ではじめて、大福に苺を挟んだ、その人に。
この世に「苺大福」という、素晴らしい宝物を生み出してくれた、その人に。
あぁ。ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
あなたのおかげで、わたしは春が大好きです。
この季節があるからこそ、厳しい冬も耐え忍ぶことができるのです。
そしていつかきっと。
わたしもいつか、そんな仕事を残してみたい。
大福を切って、苺を挟む。
そんなシンプルで、日常のそばにある、素材で、
誰かをしあわせにする、そんな仕事を。
あぁ、一体どなたでしょうか。
こんなにもわたしをしあわせな気持ちにしてくれるその人は、一体誰なんでしょうか。
でも。
正解は誰でもいいんです。
むしろ、知らなくてもいいんです。
世の中、知らない方がいいことも、たくさんありますから。
ただ。そうだとしても。
わたしはいつだって、
出会ったことのないその人に、恋い焦がれ続けるのです。
あぁ、苺大福。美味しすぎるーーーー