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本日はNew Year's Eve

30代OLが「書き手」になる夢を叶えるドキュメンタリー

桜の木の下で

「知恵つくもんだねぇ」

「ほんと物凄い速さで知恵つくもんだねぇ」

 

桜の木の下ではしゃぐ3〜4歳児を眺めながら

おばあちゃんふたりが呟いている。

一体、あの子達は何をしたんだろうか。

「成長したわね」は褒め言葉だけど、

「知恵つくもんだね」は、純粋な褒め言葉ではないような。

ーーあいつら、やりやがったな。

そんな、本音が滲んでいる気がする。

おばあちゃん達にとっては、

本来可愛くて仕方がないはずのちびっ子達。

無邪気にはしゃぎながら、あの子達はなにをしていたんだろうか。

 

「日本でいう結婚相談所みたいなもんらしいよ」

「あ、そう。じゃあちゃんとしたやつなの?」

別の60代くらいの女性ふたりが、

自転車を押しながら桜の木の下を歩いている。

「じゃあ、いかがわしいやつじゃないのね?」

「え?」

「いかがわしいやつじゃないのね?」

「え、いや、そうだと思うけど」

 

なんの会話だろう。

めっちゃ気になる。

でもふたりはゆっくりゆっくり歩いている。

後ろをずっとついてたら、不審者と間違われてしまう。

 後ろ髪をひかれながらふたりを追い越していく。

 

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小雨混じりの満開の桜の木の下。

みんな全然桜と関係ない話ばっかりしてるなー。

 

そう思って、ふと考える。

ん?

そもそも、桜に似つかわしい、それっぽい会話ってなんだろう?

 

「桜、きれいだね」

「そうだね」

 

……あ、終わっちゃうね。

 

「あっちも咲いてるね」

「きれいだね」

 

……うん、終わっちゃうなぁ。

 

桜にまつわる話題なんて、二言三言で終わっちゃって、

四言目辺りからはもう、

会社の給湯室とか居酒屋とか井戸端とか、

そんなところと変わりない話題になるのかもしれない。

 

「外国人はね、お花見の文化に感動するらしいんだ」

今度は50代くらいの穏やかな夫婦が歩いてきた。

「お花を見ながら仲間達と楽しむってのが、

そもそも外国には無いらしいんだよ。

だから、感動するらしいんだ」

「へー、そうなんだ。

やっぱりいいもんだよね、お花見」

微笑み合いながら歩いていくふたり。

 

「ぼくは きのう アルバイトを くびになりました」

少し先にいる韓国人風の男性とヨーロッパ風の男性の会話が聞こえてきた。

「だから らいしゅう めんせつを うけます」

「それは たいへんですね」

ふたりは、小雨降る灰色の空を背景に、

桜の花を大きなカメラで撮影している。

彼らも今この瞬間、お花見の文化に感動しているだろうか。

アルバイトやいろんな場面で出合った嫌なことを全部水に流して、それでも日本の文化が好きだと思ってくれているだろうか。

 

「あ〜、よごれちゃったー!」

困ったような声を出しながら、小さな女の子が長靴で水たまりの中をジャンプしてる。

「あーあ、汚れちゃったじゃなくて、自分で汚したんでしょ?」

「えへへ〜」

楽しいだろうなぁ。

カッパ着て、長靴履いて。

普通の靴の日は絶対許されないのに、長靴の日だけは許される水たまりでのジャンプ。

 

「雨が降ってよかった」

ちょうど桜が満開の週末。

あいにくの天気だったけど、

あの子だけは雨を喜んでいたかもしれない。

 

「さぁ、明日からまたがんばりますか」

桜の花を眺めながら、飲んで食べて愚痴って笑って、元気を充電して日常に戻っていく。

 

娘達に預けられたヤンチャな孫も、

帰ってしまえばまた会いたくなる。

 

いくつになってもこどもはこども。

一人前の社会人になってくれたものの、

いつになったら結婚してくれるのか、

悩みは尽きない。

 

夢に見た外国での生活も、

住んでしまえば厳しい現実が待っている。

 

それでも。

「よし、またがんばるか」

そう思わせてくれる不思議な力が、桜にはある。

 

 花びらがすべて落ちるまで。

力強い緑の葉が生い茂り、

「また来年」と思わせてくれるその時まで、

桜は今日も誰かの笑顔を支えている。

 

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