逃げる者は、もう追わない。
朝目覚めると彼はもういなかった。
ついさっきまでそこにいた気配は微かに残っているのに。
脱け殻みたいな毛布の中に手を入れると、
少しだけまだ温かい気がする。
彼のにおいが、残っている気が。
でも、それは気のせいだ。
彼はもういない。
逃げたんだ。
それが事実だ。
彼は自然に現れ、気付けばいつもそばにいた。
慌ただしく過ごしていたわたしに、
「少しだけ休めばいいよ」と、
やさしく言ってくれた時が懐かしい。
だけど。
実際、彼が現れてからはもっと忙しくなった。
いつも通りのペースを保てず、
慌ただしい日が増えた。
それに。
彼がここに長く留まらないことはわかっていたんだ。
それでも、
「きっと大丈夫だよ」と自分に言い聞かせた。
信じていれば奇跡が起こるかもしれないと、せめて思いたかったから。
今更悔いても仕方がない。
ただ来るべき時が来ただけだ。
きっと次の人は、
ドラマティックにやってきて、
そしてまた劇的に去っていくのだろう。
それはどうすることもできず、
ただ受け入れるしかないのだ。
意を決し、カレンダーをめくる。
1月はいぬる、2月は逃げる、3月は去る
2月はあっという間に逃げていった。
跡形もなくただそこにいた気配だけを残して。
3月もきっと全速力で走り去るのだろう。
ぼんやりしてたらすぐに4月がやってくる。
過ぎ去る時間が速いのは、
覚悟を決めて受け入れるしかない。
過ぎてしまうことにしがみつくのではなく、
今やるべきことに集中する。
さあさあ、月末が短かった分、
やることが盛りだくさんだ!
さよなら2月。また来年!