本日はNew Year's Eve

30代OLが「書き手」になる夢を叶えるドキュメンタリー

誰か正直に教えてください。わたしは変なおじさんに見えるのでしょうか。

「は?! まただ……」

 

いつからだろうか。

大したことはないけれど答えが見つからず悩み続けていることがある。

悩みなんて言ったら笑われるかもしれないが、

本人はけっこう真剣に悩んでいる。

 

普通の人なら難なくできるソレが、

わたしは自然とできないのだ。

 

スーッと行って、スッで終わるはずなのに、

スーッと行って、……

あれ? どした? スッが来ない。

 

シーンってなんだ。

なんで、だめなんだ。

なんで、できないんだ。

 

わからない、答えがまったくわからない。

一つだけ考え得るのはそう。

 

もしかしたら、

わたしが変なおじさんに見えているのではないか、ということだ。

 

わたしの実年齢は32歳、女性。

見た目はそれより低く見られることが多く、

長い付き合いの友人に久しぶりに会うと、

「変わらないね(笑)」と、

必ず「かっこわらい」付きでしみじみと言われる。

 

仕事では、社会人になってそろそろ10年経つと言うのに、

「若いのにしっかりしているね」と言われることが多い。

「いえ、もう32ですから」と答えると、

確実に疑いの目を向けられる。

なんなら、

……騙したな、くらいの目で見てくる人もいる。

 

 

 

他人の目に自分がどう映っているのか、イマイチわからない。

ただどうやら、年齢より若く見られるらしい。

 

そう思っていた。

 

 

でもやっぱりあの場面になると、

どうもまたあの疑問がわいてくる。

 

わたしは、変なおじさんに見えているのではないだろうか。

 

今日もそんな場面があった。

仕事で展示会に行き、休憩中に「他のブースも見ておいで」と声をかけられ、

会場内をウロウロしていた時のことだった。

 

美味しいにおいに誘われて歩いていくと、

餃子や生ハムやうどんなどの試食が配られていた。

 

うーん、でもお腹いっぱいだしなと思っていると……

 

ハッ! 

 

アイスクリーム!!!

アイスクリームの試食が配られている!!!!!

欲しい! 食べたい!! アイスクリーム!!!!! 

 

ウキウキしながら鼻歌交じりで列の後ろに並ぶ。

 

小さなコーンにちょっこり乗ったアイスクリーム。

前の人たちが、スーッと近付きスッと受け取り去っていく。

ちょっと先で立ち止まり、嬉しそうにアイスを食べている。

 

スーッ、スッ。

スーッ、スッ。

 

どんどん近づいてくる。

 

スーッ、スッ。

スーッ、スッ。

 

スーッ ……

 

ん? 

 

……

 

はっ! まただ! 

なんで、なんで?! 

 

なんでよりによって、アイスクリームで!!!

 

わたしの悩みはそう。

なぜか試食をもらえないことだ。

 

さっきまでの、スーッと行って、スッと受け取る、

その自然な流れが突然止まってしまう。

 

物が無くなったり、前のお客さんが話を始めたり、

店員さんがあっちを向き始めたり。

 

なんでだ、なんでだ。

なんでわたしは自然に試食をもらうことができないんだ?? 

 

何がおかしいんだ? 何がいけないんだ? 

「買わないけどタダならください」感が出すぎてるのか? 

もしくは「別にほしくないけど」オーラを

出してると思われているのか? 

 

はたまた。

やっぱり。

やっぱり、それしかないよね。

 

わたしは、変なおじさんに見えているのだろうか。

 

みんなが自然に受け取るものをもらえないって、

志村けんの変なおじさんか、ミスタービーンくらいじゃないか。

どっちにしたって変なおじさんだ。

 

みんながスーッと行って、スッともらうから

自分もスーッと行ったのに、……シーン

 

おかしいなと首をかしげ、

キョロキョロしたり、

身震いしたり、

店員のお姉さんをこちょがしてみたり、

思いっきりクシャミをしてみたり。

 

あらゆる策を講じるのにもらえない。

 

それで、

あそこならもらえそう! と、

別の列に並ぶと、銀のタライが降ってきたり、鉄の棒にぶつかったりするオチじゃないか。

 

変なおじさんじゃないのになぁ。

あー、食べたかったな、あの北海道産ミルクのアイス。

そもそも機械を売ってるから、あのアイス自体は売ってなくて試食じゃなきゃ食べられないのに。

 

なんで、なんでわたしはもらえないのかなー。

うーむ、わからない。

自分じゃ自分が見えないからわからない。

 

誰か、正直に教えてほしい。

わたしは変なおじさんに見えているんだろうか。

 

そんなことを考えていた帰り道。

渋谷駅の埼京線に向かう動く歩道で、

反対側から若い女性が歩いてきた。

 

帰宅ラッシュの渋谷駅。

歩きながら

まん丸の今川焼にかじりつく、

ポッチャリしたピンクのコートの女性。

 

なんか気持ちいいくらいにしあわせそうで、

嬉しそうで。

もしもわたしのポッケに今川焼が入ってたら

あげたくなっちゃうくらい。

 

人混みに紛れたあのホクホクの笑顔を見ていたら、

試食がもらえるもらえないなんて、

なんだかどうでもよくなってきた。

 

何をわたしは、ああでもないこうでもないと考えていたんだ。

自分を変なおじさんにはめこんで、一体なんの答えがほしかったというのだ。

 期待する反応が起きないからって、アタフタして一人考え込んで。

何をしたかったんだろうか。

 

最寄駅に着く頃には、もう変なおじさんの陰は、わたしの頭の中からすっかり消えていた。

改札を抜けて、まっすぐにコンビニへと向かう。

 

ふふふ。なんのアイスを買って帰ろうかな。

ふと見上げたガラスの窓には、今川焼の彼女のように、にんまり笑うわたしが映っていた。