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本日はNew Year's Eve

30代OLが「書き手」になる夢を叶えるドキュメンタリー

満員電車での格闘。もしもわたしがあの人だったら、あんなことにはならなかったのかもしれない。

やっべーーーーー

 

さっきの駅で降りたと思ったお姉さんが、

視界に入った。

 

な、泣いてる。

ど、どうしよう。

あの人泣かしたの、わたしなのかな……

 

 

それは、平日の朝の満員電車で起こった出来事。

荷物挟まりとかなんとかで電車は次々遅れ、いつもよりぎゅうぎゅう詰め。

だから正直、わたしの勘違いもあるかもしれない。

もしかしたらわたしが過敏だったのかもしれないし、彼女が敏感すぎたのかもしれない。

きっかけは、ほんの些細なことだったんだと思う。

あれが、漫画や夢の中の話ならよかったのに。

 

駅のホームは、既に電車を待つ人で溢れていた。

ーーこれ、乗り切れるかな。

できるだけ前の人と距離を空けないように、小さくなって並んでいた。

 

「白線の後ろまでお下がりください!!」

 

到着した電車にどっと人が乗り込む。

押し寄せる波に押されて車内になだれ込み、

立ち止まりたくても、気づけば車内の奥まで押し込まれていた。

 

ーーひゃー、これで30分も我慢してるの辛いなぁ……

 

女性専用車両とはいえ、この日の車内は押し込まれた人達の熱気でムンムンとしていた。

どこか殺気立つものを感じるくらいに。

 

ーー痛てて……

 

電車が揺れるたびに押される。

バッグが迷惑にならないように抱え込み、ジッと耐えていた。

 

ーーん??

 

ある時から、背中に違和感を感じていた。

 

なんだろなぁ、これ。

 

ぎゅうぎゅうというか、ぐりぐり。

 

ガタンガターン

 

ぐりぐり

 

ガタンガターン

 

ぐりぐり

 

ーーねぇ。お姉さん。

あなた、肘でわたしを押し離そうとしてません?

 

隣のお姉さんが、眉間にシワを寄せながらひたすらわたしを、突き放そうと肘で押してくる。

痛いから離れようと思うけど、通勤ラッシュの電車の中にそんなスペースはない。

 

ガタンガターン

 

ぐりぐり

 

ガタンガターン

 

ぐりぐり

 

ちょっと、いい加減やめてほしいんですけど……

 

隣のお姉さんを避けようとすると、別のお姉さんをわたしが押してしまう

 

どうしたらいいんだーーー

 

ぐりぐり

 

やめろーー

 

ぐりぐり

 

いい加減にしてよ!と思って、隣のお姉さんの方を向いた瞬間。

 

「あんたが悪いのよ。私、1%も悪くないですから」

という顔のお姉さん。

 

般若のお面みたいに皺の寄ったお姉さんと目が合った。

 

瞬間。

 

「ふふっ」

 

ーーあ、やばっ

 

キッ!

ぐぉーーーーー

ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりーーー

 

お姉さんの怒りマックス!!!!

 

ーーあぁ、やってしまった。やってしまった。

お姉さんの顔を見て、つい笑ってしまった。

だって、そんな人、実在すると思わなかったから。

満員でぎゅうぎゅうなのに、ぐりぐり押してくるなんて、

コントでしか見たことなかったから。

脳が、脳が、

面白いと認識してしまったんだよーーー

 

その時、駅で数人がおり、

一瞬だけ空間ができた。

お姉さんの殺気を感じたわたしは瞬時に隙間に滑り込み、お姉さんと背中合わせになるように、体制を変えた。

 

ーーふぅ、セーーフっ!!

 

ピシッ

 

ん?

 

ピシッ?

 

え??

 

ピシッ パシッ

 

なんだ? また痛いんだけ……ピシッ

 

ひゃー!

 

背中合わせのお姉さんが、

ポニーテールを振り乱し、

わたしの頭めがけて、当ててくる!!

 

「……くくくっ」

 

あー、もうだめだーー

可笑しいよー。

ポニーテールで攻撃って。

まじで、コントじゃないか!!

あー、笑っちゃダメだと思えば思うほど、可笑しくなってくるよー

 

ピシピシピシッ

 

次の駅で停車した瞬間、

またわたしは隙間に滑り込んでお姉さんから離れた。

 

流石にこれ以上笑ったら、マジでキレられる。

でも、笑ってないと、わたしの心ももたない。

離れよう。それが一番だ。

 

それからは、相変わらず混んではいたものの、

ぐりぐりもピシピシも感じなかった。

ただいつものように、ぎゅうぎゅうだった。

 

ーーはぁ。朝から疲れたな。

 

気付けば、いつもと変わらない朝になっていた。

やがて大きな駅に止まり、人がドドドドッと降りていく。

なんとなくさっきのお姉さんが動く姿が見えた気がした。

 

ーーよかった。降りた。

あ、そういやメール返さなきゃ。

えーと、来週の件ですが……

 

すんっ

 

ーー11時頃でいかがでしょうか……

 

すすんっ

 

ーーご検討お願い致します……

 

すんっすんっ

 

ん??

 

誰か、泣いてない??

 

すんっ

 

 

 

 

 

 

はっ!

 

 

 

すんっ すんっ

 

 

 

やっべーーーーー

 

 

 

さっきの駅で降りたと思ったお姉さんが、
視界に入った。

どうやら大きな駅で人が降りた時、移動して空いてる席に座ったようだ。

浅く腰掛け、少しだけ俯き、

肩を震わせている。

 

な、泣いてる。

 

それは、いかにも悔し泣きだった。

試合に負けた少年達が目を真っ赤にして肩を震わせる様子と一緒だった。

 

ど、どうしよう。

あの人泣かしたの、わたしなのかな。

 

絶対、そうだよな。

馬鹿にされたって、思ったんだよね。

 

ごめんなさい。

 

彼女の視界に入らないよう、わたしは静かに離れた。

 

すんっすんっと、

しばらく鼻をすする音が響いていた。

 

あぁ、どうしよう。

わたしは、なんてことをしてしまったんだ。

 

きっとお姉さんは、仕事でも疲れてて、

理不尽なことを言われて心もすれすれで、

しかもプライベートもうまくいかなくて、

気持ちに余裕がなかったのかもしれない。

そんな日にぎゅうぎゅう詰にされて、

とにかく肌に触れるもの全てを許せないほど、イライラしてたのかもしれない。

 

もしもわたしが、ガッキーみたいな女子力高い素敵女子だったら、あんなことにならなかったのかな。

 

「疲れてるんですね。

ハグしませんか? きっと落ち着きますよ」とか言って、お姉さんを癒せたのかな。

 

いや、でも気持ちに余裕がなくてヒリヒリしているときは、逆に優しくされると辛くなることもある。

優しい人と自分を比べて、さらに落ち込んでしまう。

 

だとしたら、だとしたら。

 

あぁ、お姉さん。

ごめんなさい。

もしもわたしが、

もしもわたしが、

ザキヤマだったら、こんなことならなかったのに!!!!

 

アンタッチャブル山崎だったら、

誰も傷つけず、この状況を笑いに変えられたのに!!!

 

ぐりぐりされたら、

「ちょっと〜やめてよ〜

ドリルやめてよ〜

あ! ちょっと!

アゴが割れちゃったじゃない! 

ひゃ〜」

って、お姉さんが笑ってやめてくれるまで、ふざけ倒せたのに。

 

レギュラー西川くんの真似をして、

片手を上げて気絶したふりをしていたら、

イライラすることさえバカらしくなっていたかもしれない。

 

思いやりに欠ける不謹慎なわたしは、

ザキヤマを目指すべきなんだ。

中途半端にふざけないで、

徹底的にふざけ倒すべきだったんだ。

 

お姉さんにも、カンニング竹山役をお願いすればよかったんだ。

「なんなんだよ! 笑ってんじゃないよ!」って、怒りを吐き出してもらえば、スッキリしたかもしれない。

 

あー、でもそんなこと言っても無理だよなー。

ザキヤマには、なれないよなー。

やってみたところで、中途半端でわけわかんなくて、ブチ切れられるのがオチだ。

 

現状、わたしには女子力もザキヤマ力も足りない。

満員電車で穏やかに過ごすための良い策も、今はまだ思いつかない。

だからせめて、誰も傷つかないように、大人しくジッとして、本を読んでいよう。

 

満員電車から離れられる年末年始。

心身ともにリフレッシュするぞー

冬休みがー、くーるー!!!!